KSS代表理事 徐夢荷
インタビュー
「改めて問う、KSSの意義とは」
2021年度で第8回目を迎えるKSS。
コロナ禍の中で従来通りのKSSが開催できない状況の中、改めてKSSの意義が問われている。
今後のKSSの行く末と役割とは一体何なのか。
代表理事である徐夢荷(以下:夢・夢さん)にインタビューした。
プロフィール

徐 夢荷/ Menghe Xu
中国遼寧省出身。高校卒業とともに渡日し、東京大学に入学。2014年より小松サマースクールの運営に携わり、2016年に実行委員長を務め、2017年より理事職。現在ワンダーラボ株式会社で教育サービス「ワンダーボックス」と「シンクシンク」のコンテンツ企画と海外マーケティングを担当。仕事外では小中高校生向けのSTEAMワークショップを主催し、科学とものづくり教育に打ち込む。
価値観を塗り替える、KSSを通して変わる。
実行委員として参加した第1回での経験。
夢:KSSに参加してからです。大学って各々が自分の勉強したいこと、研究したいことを探求する場じゃないですか。今まで私は同じ土俵で他の子と競い、勝つことに勉強の意味を見出していて、自分が何を研究したいかとかを考えてはいなくて。それが突然競争相手がいなくなってしまった事で大学で勉強する理由や、もっといえば生きがいみたいなモノを無くしてしまったんです。
夢:そうなんです。誰でも何かしらではマイノリティだと思っていますし、それは全く悪いことじゃないです。ただ、自分がマイノリティであるときに、社会からの承認を得るためにはマジョリティよりも多くの障害を乗り越えなければならないのも、また事実です。その時に、例えば、バイリンガルであることや、他分野の知識を持っていることがそういった障害を乗り越えるための力だったり、自信になると思うんです。

小松だから提供できる、全国でもトップのリソース。
「地方だから」の妥協は一切無い。
夢:小松市に限らず石川県や北陸全体に言えることなんですが、KSS以前の北陸って学生を対象にしたグローバルなワークショップがあんまり無かったんですね。一方で、OUIK(1)やPrinceton in Ishilkawa(2)に代表される国際的な教育団体や組織はあったんです。需要も、資源もあるのにそれを活用する場所が無いっていう。それを繋げたのがKSSだったんです。
注(1):国連大学サステイナビリティ高等研究所いしかわ・かなざわオペレーティングユニット
注(2):米・プリンストン大学主催の、石川県で行われる、日本語を学習する海外大学生の短期留学プログラム
夢:たしかにそうですね(笑)。「他人を知って、自分を知る」ためにはそういった身近な多様性も欠かせないことだと思います。多様性ってなにも「めずらしいもの集めました!」って訳じゃ無いですからね(笑)。同じ日本、同じ高校生でも出身地や文化が違えば、自分の知らない世界の人です。そういった「被る部分もある、けど違う」っていう身近さから学べることも多いと思います。

大学生が全てを考え、作り、突き詰める。
「揺らぎ」があるからこその主体性と自由な発想。
夢:規模感はこのままでいいと思っています。これ以上大きくするつもりは今のところありません。この規模感がKSSの良さでもありますしね(笑)。ただ、プログラムは常に進化させる必要があると考えています。KSSは、SDGsやジェンダーといったトピックをいち早くプログラムに組み込んできました。これからもそういった風に、時代に合わせてプログラムを刷新していく必要があると考えています。大学生が考える時代のニーズや、こういった事を高校生に伝えたい!といった想いをプログラムとしてカタチにすることが一番重要だと考えています。いままでもやってきている事なんですが、これからもこれを続けることでKSSとして常に進化できるんじゃないかと思っています。

インタビュアー/編集 小野寺壮
編集 市川裕太郎